2020.09.04
最終回
『 全てが集約されるお仕事(スクリプトについて) 』
スクリプトのお仕事
スクリプトという作業は皆さんは余り意識はされないかと思いますが、全てはここに集約されてきます。 というのも、このブログでも4回に渡ってお話してきた素材は、全てこのスクリプトのためなのです。
スクリプトとは、ゲームとして動くようにするプログラムです――と言うと分かりやすいでしょうか?
グラフィックデータ、テキストデータ、音声データなどバラバラのパーツをひとつに組み上げた結果 皆さんがよく目にするプレイ画面になるのです。
スクリプトはプログラムのコードを打ち込む作業でもあるので、作業画面は半角文字の羅列になります。
「ここから背景の●●を表示、BGMを▲▲に。ここで立ち絵■■を表示して××を消す。SE(効果音)は……」みたいな事を逐一細かく命令しています。
昔(OrangePocket辺り)は完全に手打ちでやっていたので色々ミスも多かったです。
ミスるとプログラムを走らせようとしてもエラーが出て起動しないので、ミスした場所を探して
「あ、スペルミスしてる!」とか「スペースが全角だった……」とか色々ありましたが、今は全部ツール化して
純粋に演出部分を見ていけるようにしました。
立ち絵ひとつの表示にしても、複数キャラを重ねたときにはどちらかが手前側に表示されてしまうので置き方が間違ってしまうこともあります。HOOKの場合は立ち絵の表情ひとつでもかなり細かく分割されてます。
テキストやボイスによって表情の微調整が出来るよう、素体の顔はのっぺらぼうにして「目」「眉毛」「口」が個別表示されており、これに
涙や顔色(青ざめ、赤らめ)、これらの強弱などの組み合わせで表情を作っております。
なので実は表情差分の組み合わせ自体はアホみたいに多く存在していて、多乃実の正面絵の表情差分は19,968パターンあります。
もちろん全部を使う事はないのであくまで数字上です!
今作は前髪も別パーツ化させて表情よりも上に表示される仕様にしたので、素体は前髪すらなかったりします(笑)
皆さんには1枚絵に見えてても、実はスクリプトで表示しているんですよという一例です。
皆さんが見ているキャラクターは、素体の上にそれぞれのパーツを重ね合わせた姿になります。
スクリプトのポイント
各素材はスクリプトで組み上げたときに完成型になるようにしているので、当然テキストもスクリプトを前提にして書き上げています。
例えば目で見てわかる髪型とかはテキストにも書いてしまうと二重表現になるのでやらないようにしますし、何より音がプラスされると印象が大きく変わっていくのでここまで計算に入れていたりします。
ギャグシーンがわかりやすく、声と合わせる事によってキレが増す場合もあれば逆に死ぬ場合もあったりします。
テキストも収録時も問題なかったハズなのにスクリプトに組んでみたら「なんか違う??」というブレはちょこちょこ発生します。
使用BGMを変えてみたり、SEの使い方を変えてみたりとあれこれして調整をする場合もあれば、テキスト自体を書き直す事もあります。
『放課後シンデレラ』体験版内、雪子の「初めての共同作業だね」というセリフもテキスト上ではそんな強いギャグではないですが
スクリプトの演出で強調する事によりギャグとして成立するようになっていたりします。
BGMひとつ変えるだけでも本当に印象が変わってしまいます。
ギャグシーンなんかはドタバタ系よりも案外シリアスだったり壮大な曲の方が笑いを誘いやすいパターンがあったりと、実際に比べてみて感じます。
実はこうやって、皆さんが見ているシナリオも、目や耳で没入感が上がるよう調整されたスクリプトによって成り立っています。
スクリプトがダメだと、どんなにテキストが良くても何も伝わらなくなってしまいますので、スクリプト作業は本当に重要です。
最後に
数か月に渡って開発ブログを書き、制作肯定の裏側を少しばかり綴ってきましたが、ディレクターでもある私が一番言いたい事は「ゲームは多くの人が携わって成立しているものなんだ」です。
今回は細かくなりすぎるため画面デザインやロゴデザインとか、広報販促などを省きましたがどれひとつとして欠けていい仕事はありません。皆さまが触れる名前は原画やシナリオが多いかもしれませんが、その裏には多くの方々の努力や苦労があります事を知っておいて頂けると嬉しいです。
『放課後シンデレラ』も、スタッフ皆の協力で成り立たせる事が出来ました。(今回はコロナの事もあって連携キツかったですが……)
そして何より、プレイをして下さる皆さまがいて下さるからこそ成立出来る仕事でもあります。
皆さま、本当に本当に、有難う御座いました。
HOOKSOFTはこれからも続いて行きますので、引き続き宜しくお願い致します。
オマケ
『Eスクールライフ』
「学園モノを原点から見つめ直そう」という意識が企画のスタートにありました。
わかってはいましたが、制作をしてみるとその難易度の高さにかなり翻弄されてしまいました。
『どっちのiが好きですか』
個別ルートを1キャラ2ルート作成するという、なかなかにチャレンジブルな企画でした。開発初期は
共通部にも様々な分岐ポイントがあり、シーソーのように「リードしたい」「リードされたい」が揺らぐ
システム的なものがありました。
『放課後シンデレラ』
実は『Eスクールライフ』が無かったら生まれなかったであろう企画です。
久しぶりに私が企画からディレクションまで一人でやったので(めちゃくちゃキツかったですが)楽しかったです。
故に一部SMEEぽくなりました、ごめんなさい。