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エロゲー制作ブログ

2020.06.19

第2回
『 絵周り(原画・グラフィックス)のお仕事 』

原画のお仕事

「原画」という項目はこの業界では基本スペック欄にもあるため皆さん認識されていると思います。 一番の売りになるキャラクター周りの作画作業になり、デザイン作業から入るのが基本パターンです。
キャラクターの設定書などに目を通して、それを絵に表していくのがキャラクターデザインになります。 取り敢えずは幾つも髪型や表情のパターンを作ってみてディレクター(や、ライター)とイメージのすり合わせをして まとめていきます。
まとめ方も、顔回りを先にやってから等身周り(胸のサイズとか)を作っていくケースもあれば全身のシルエットを整えてから詳細を詰めていくケースもあるのでここらも作業者によって進行方法は違います。 最終的にまとまればいいんですよ、まとまれば。

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「RINKS」では顔周り(目のサイズや描き方どうする?など)を決めてからそれに合わせて等身を作っています。 『放課後シンデレラ』は『Eスクールライフ』のときより目を小さくして横に広げ、デフォルメ表現を少しだけ薄めてみました。

キャラクターを作ったら服装作りです。
学園モノなら皆さんの目に触れる事が多い制服が最重要になるので ここらをまとめて各キャラクターに着せたらようやく第三者が見ても何らかのイメージを持ってもらえるレベルになります。 昔は制服はセーラー服タイプが鉄板だったのですが、ある時期からブレザータイプも受け入れられるようになってきて デザインの方向性が増えた印象です。『放課後シンデレラ』は二次元デザイン抑え目で調整していきました。

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制服が出来たら服装のデザインも進めていきます。理想としてはキャラクター毎に個性が出るようにしていけたらいいのですが 結構難しいんですよ。リアルなファッションブランドをベースにすると二次元だとかなり地味になってしまうので、リアルで見たらちょっと引くぐらいの派手さがいいのですが参考資料が少ないわりに案出しは大量にしないといけないので個人的にはかなり脳内カロリーを消費します。

なんでここまでデザインに関して色々書いたかと言いますと……何気にデザインする事多くて時間かかるんですよ!と訴えたかっただけです。

デザインが終わると実際の作業として「立ち絵」と呼ばれる素材や「イベントCG(スチル)」と呼ばれる素材などを作成していきます。 線画作業までが原画の仕事になります。基本、塗りは作業外ですが最近は塗りも出来る原画さんも増えて来たのでここらの境界線は昔と比べると曖昧になってきています。 とは言え、膨大な素材数を全部自分でこなすことはかなり困難なため監修とか調整として作業をするという流れです。

グラフィッカー

原画が仕上げた線画を塗る人です(そのまま)。
皆さんは原画の方に目がいくので見過ごしがちですが、グラフィッカーもかなり繊細な技術を要する作業です。 グラフィック周りは作業量も膨大になるため複数人で作業をするのが基本で、取りまとめるチーフが存在します。
チーフは複数人で作業しても統一感が出るよう彩色の仕様を作成します。 服装毎の彩色パレットであったり、影の入れ方、瞳の構造、ハイライトの処理 etc. どんなに仕様を細かく作っても、作業者が違えば出来上がりにも差は生じます。 この“差”を減らす仕様を組めるかどうかも技術だな、と感じております。
また、グラフィッカーが原画のフォローをするパターンもあります。例えば服の柄や小物を加えたり、背景を加筆するケースもあります。 これらは別に原画の怠惰とかではなく、作業の効率化を考え複数人で絵を仕上げる連携プレイとお考え下さい。 私も原画をしていた頃はかなりグラフィッカーさんにフォローを頂きました。


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先ほどから“膨大な素材数”と言っておりますが、皆さんはこの認識のずれに気付いていらっしゃいますか?
昨今のフルプライスはイベントCGがおおよそ80枚前後だと思いますが、これらはベースの枚数であり実際はこれらに差分作業が必要になります。
過去私が制作したSMEEの『同棲ラブラブル』はフルプラではなかったのでイベントCGの枚数を落として65枚にしてましたが 1枚辺り平均30枚の差分があったため実際のデータ数は1950枚ほどでした。このくらいずれが出てくるんです……。

差分てそんな時間が掛からない印象かもしれませんが、どの差分でも絵的におかしくならないようグラフィックデータのレイヤー構造が 複雑なパズル化をするのでモノによっては発狂案件になります。 また、同じ1枚でも内容によって大きく作業時間は異なってくるので枚数ではなく作業時間で換算をして効率化を考えていきます。
昔のグラフィックツールはレイヤーが100個までしか作れなかったので、1枚のCGでも「キャラクター作業用」「背景作業用」と分けて 作業することがありました。管理データも増えてややこしかったです。

背景

あまり触れられる事も少ないので、ここも取り上げます。 エロゲーは性的対象でもあるキャラクターに目が行くのは当然ではありますが、このキャラクターに深みを与えるのが背景です。 「このキャラはどこにいるのか?」を言語化せず分かりやすくパッと伝えられるのって難しいし凄い事なんです。

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キャラクターを引き立たせるものでもあるから目立ち過ぎてもダメだし、引きすぎてもダメ。 でありながらキャラクターが表示されていない状態でも見どころがあるようにしないといけないと考えると、かなり無茶ぶりですよね(笑)

立ち絵と一緒に表示される背景を「汎用背景」と呼ぶのですが、この作業を進行しておかないとイベントCGに着手出来ないのでかなり早めに作業進行をする必要があります。
こちらで作成した資料を基に、背景さんと話をしながら街の全体像を作成して大まかな配置をイメージしていきます。 経験的に、「ここにこれを置いて」とか具体的な指定より「見た人にこういう印象を与えたい」とか使用用途を説明した方がまとめやすかったです。
『放課後シンデレラ』でもお世話になっている背景さんは街を作るのが好きな方なのでいつも勝手に地図を作られてます(笑) いつもそれをうまく活かせていないのが申し訳なく……。

出来上がった汎用背景に時間差分を加えていきます。
基本は昼なので夕と夜。室内の場合は室内灯が点いているか否かも。 SMEEの『ピュア×コネクト』と『フレラバ』は同じ街で作成していますが季節が「春」「夏」「冬」があったので このときは季節差分も作成しておりました。あ、天気差分も作ったなぁ。
雲の出来方と空気の色味と町中の看板や飾り付け、木々の彩りを変えて雰囲気を出すようにしました。 ここらの変化に気付いたプレイヤーは少ないと思いますが、脳で認識していなくとも視覚では捉えてると想定して演出した次第です。

オマケ

おまけ4作品イメージ

『_summer』
5周年企画として当時まだ黎明期だった予約特典という販売方法に挑戦しました。以後、業界内に浸透してしまったことは 良かったのか悪かったのか……。 このときの予約特典は5周年記念100Pを超えるフルカラーブックでした。

『HoneyComing』
HOOKのなかでも一番時間を掛けた一作だったと思います。発売前にヒロインのボーカル曲をCDにして売ったりと 幅広く展開しました。 予約特典に「Plesure」というキャンペーンハガキをつけ、後日数回に分けグッズを郵送する企画をしましたが 対象者が万単位だったため発送に時間が掛かり大変でした。スタッフみんなで作業したよ!

『FairlyLife』
ハニカミの後という事もあり、企画自体が固まるのに結構時間が掛かった記憶があります。 擬人化案出し会議は結構カオスで楽しかったです。 ボツになったものも多かったですが、日の目を見ることは……無さそうだなぁ。

『さくらビットマップ』
10周年企画です。前作同様、企画会議が非常に難航しました。内外ともにプレッシャーが多く 大変なことも多かったです。 以後、制作方式も変わっていったのでひとつの転換点だったのかもしれません。

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