2020.05.22
第1回
『 ディレクターのお仕事 』
ディレクターとは?
ディレクターとは、エロゲ制作において一番皆さんが「謎」だと思う仕事じゃないかなと思ってます。役割としては『ゲームを完成させる人』だと私は認識しております。 有り体に言うなら『制作の責任者』ですね。このくらいざっくばらんなので、実際の作業内容は各ディレクターのスタンスによって大きく変わってきます。
大きく二つに分けてみると
・外側から各作業者に指示をして状況を見守り随時対応をしていく『監督タイプ』、
・自分も素材制作作業をして各作業者と同じ目線で指示を出していく『司令塔タイプ』、
になるのかな?どちらもメリットデメリットあるので「ゲームがちゃんと納期に完成すりゃそれでいいんだよ」という目的を達成できれば手段は問われない感じです(偏見?)。
私は司令塔タイプなのでこっち方面で少しご説明を。
ディレクターの作業内容
・企画を作る
コンセプトやターゲット層、売りポイントとかを文章化して色々な人に見てもらいます。
私たちが作っているものは商品なのでここらをしっかりさせる必要があります。
これをやったからといって当然売れるわけではありませんが、これが開発の指針になり各素材のリテイクの判断基準になります。
・フローチャートを作る
ゲーム本編の進行表です。作中でどのように分岐していくのかとか可視化します。
プレイヤーの判断に委ねる部分が多ければ多いほど複雑化していくため、『放課後シンデレラ』の下校ルートを作成するシステムが
どのくらいなのかはお察し下さい…。
・キャラクターを作る
作り方は色々。
今作はディレクター側で作成しました。「下校」というコンセプトに合わせて5タイプの帰り方を考え、そこから
キャラクターのイメージをまとめていきました。
キャラクター重視のゲームであることを一見さんにもわかって頂けるよう、名前もキャラクターのコンセプトになぞらえ
分かりやすくしてみました。ど、どうですかね??
・各種スケジュールを作る
発売までの開発スケジュールを作成します。HOOKSOFTは延期ご法度なのでイレギュラーを想定して
対応する時間も含め作成しています。スケジュールは理想ではなく現実として作成しないと後から大炎上します…。
スタッフを疑って作らなきゃいけないのがディレクターの辛いところ…。
・各種発注書を作る
「立絵指定書(服や表情も)」「イベントCG指定書」「背景指定書」「音楽指定書」「テキスト指定書(プロットとか)」を作って
全体的な完成図を可視化します。中でも「背景指定書」は早めに作成して発注しておかないと
イベントCGに着手出来なくなるので注意が必要です。
これらは各作業者さんと打ち合わせをして、イメージのすり合わせをしてその内容をまとめていくイメージです。
全てがほぼ同時並行になってしまうので企画スタート時はめちゃくちゃしんどいです。
ここで時間が掛かるとそのままスケジュールの遅れになってしまうけど、思考時間が少ないと
後から根本を揺るがす構造上の問題が発覚してしまうので精神的にも追い詰められます。
ですが基本、ここらを投げた後は素材待ちになるので手が空きます。
なので司令塔タイプはここから実作業に入ります。
テキスト書いたり絵を描いたり、発注書に反映しづらい細かい色々な素材作りとか作業ミスの補填とか。
「ここどうしたらいいですか?」「あ、じゃあここはこちらでやってしまいますのでそこお願いします」みたいな。
特に今作は共通ルートのフローが複雑化しているのでディレクターじゃないと把握出来ない部分も多いので注意が必要です。
・広報、営業と開発を繋ぐ
OHPなど皆さんの目に触れる状態に持っていくため、開発外の人間と接する機会が増えます。
打ち合わせが増えるため司令塔タイプはここで作業時間のずれが生じて精神的にも追い込まれます。余裕でこなす人もいます。すごい。
・収録
収録は拘束時間がどうしても増えるため1日の作業時間が多くなります。
ユーザー的には「Hシーンの収録とか興奮するのかな?」とか妄想されるかもですが、収録はマジ戦場です。
こちらも台本を追いかけながら場合によってはセリフ調整したり読み違えが無いかなどチェックするところが多いので
正直興奮したりする余裕はありません。声優さん共々超必死なのでかなり集中力を使います。
・スクリプトチェック
実際にゲーム画面に組み込まれているデータを随時チェックして調整指示を出していきます。
最近のエロゲのテキスト量は半端ないので何度も目を通していると矛盾に気付かなくなってきます…。
特にプレイヤーが関与する余地があるゲームだと、プレイヤーによって持っている情報に違いが出てくるので
「Aパターンの場合」「Bパターンの場合」「Cパターンの場合」など、どれでも整合性を合わせる必要があります。
他にも細かなことは色々とありますが、長くなるので割愛します。ディレクターはとにかく多くの人と接する必要があるので、誰とでもしっかり話をしていけるコミュ能力が大事なのかもしれませんね…。
オマケ
『雨あがりの猫たちへ』
実際に私は作業には関わってはおりませんが、六畳一間で制作していました。複数の同人グループが結集するカタチでスタートし、スタッフの多くは大学生でした。ちなみにHOOKの名付け親は武田弘光さんです。
『天紡ぐ祝詞』
HOOKSOFT20年の中でみても異色の一品。制作は赤字で借金を背負い一時は路頭に迷いました。
『OrangePocket -オレンジポケット-』
実は裏で何度も作り直してました。だってこれが売れなかったらみんなで掛け持ちの肉体労働をすることになってたので。正に背水の陣で臨んだ人間たちが作った執念の一作です。
『LikeLife -ライクライフ-』
見事、事務所を構えられるようになり3食塩パスタから解放。イベントのたびに食料を下さったユーザーさん、本当に有難う御座いました。