『今日からしばらくの間』
『こちらのお宅にお世話になることになりました。篠崎あゆみです』
この冬、私は突然の家庭の事情で、
従兄妹のお兄さんの家に預けられることになりました。
お兄さんと会うのは本当に久しぶりで、
最後に会ったのは、多分私がまだ小さかった子供のとき以来。
最初の挨拶が肝心なのに、
私、やっぱりお兄さんに会ったらすごく緊張してしまって……
でもそんな私にお兄さんは、
『今日から一緒に暮らすんだから、そんなにかしこまる必要なんてないよ?』
と、言ってくれました。
おばさんも妹の香里奈さんもすごく私に良くしてくれて、
私も少しずつですが、この街の生活に慣れて行けそうな気がします。
気がつけばもう今年も終わり。
クリスマスやお正月を控えたこの時期に、お母さんは電話で『彼氏でも作ったら?』
なんて、笑いながら言ってくるけれど……
私にはまだちょっと、そういう話は早いと思う。
『あゆあゆ! 今朝もウォシュレットで感じてたの!?』
『ち、違います……! ただちょっと、ボタンを間違えちゃっただけで……!』
お兄さんも香里奈さんも、毎日私をからかってくるけれど、
でも今はこれくらい仲良くしてもらえてすごく嬉しい。
私はこの冬、新しく住むことになったこの街で、
精一杯自分の出来ることを頑張りたいと思います。