『いらっしゃいませ、3名でご予約の木下様ですね?』
今日も私の店、ベーカリーレストラン・ピヴォワーヌは大盛況。
パン屋にレストランを併設し、
おまけに強気な価格設定で勝負に出たのが2年前。
開店当時は高すぎるだの、
タイムセールがないのはあり得ないだの……
そんなことばかり言われ毎日同業者に叩かれていた私。
『バゲット一つに800円も出せるか』
『お客の財布事情を考えろ』
そんな業界内の常識とやらに、私はいつも笑顔でスルー。
100円であんパンが欲しいなら、
コンビニで買えばいいのにと思うのは私だけ?
他店との値下げ競争に巻き込まれたら終わり。
安くしないと売れないパンなんて、それって最初から需要がないってことじゃない。
『石橋はダッシュで渡れ』
私はこれを信条に、これまで脇目もふらずに自分の人生を全力疾走して来た。
今日も美由紀が男を紹介するってしつこく電話してくるけど、
残念ながら私にとって、恋人は『仕事』お店は『我が子』
だから正直、結婚とか交際なんて二の次の人生なんだけど……
でももし、そんな自分にも惹かれる出会いがあったなら、
それはそれで面白い……?
いや、駄目だ。全然駄目。
自分でも言うのも何だけど、男性の横でデレてる私とか全く想像出来ないわ。
まあパパには悪いけど、孫の姿は永遠にお預けみたい。
さーて、今日も仕事仕事……♪