> スペシャルWEBミニエピソード「穂奈美との未来」
シナリオ:松倉慎二 イラスト:RINKS
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10時からの予定だったけど、待ちきれなくて1時間も前に来てしまった。
引っ越しの荷物が届くのは10時半だし、今更ながら少し早く来すぎたと後悔し始めた……
まああいつには連絡しておいたし、準備が出来たら来てくれるだろう。
3LDK、築年数10年で学園から徒歩5分で家賃9万8千円という破格な物件。
久瀬と付き合って数年、
あいつが大学を卒業と同時に結婚しようとプロポーズされて今に至るが……
ここに今日からあいつ一緒に暮らし始めるなんて想像もしなかったし、自分が生徒に手を出すなんて思わなかった。
周りのこともしっかり見ているし、何かあったりしてもフォローにまわったりして陰ながら活躍しているのもよく見かけた。
それに……私の下手な料理も美味しいって……
それだけじゃない。オリエンテーションの時のことだって誰にも言わないでくれたおかげで
他の生徒にバレずに済んで威厳を損なわずに済んだ。
あいつにはそういう意味でも頭が上がらない。
いや、もう結婚したんだしあいつって呼び方も良くないか……
だ、旦那……? 夫? あれ? ちょっと待て久瀬のことなんて呼べばいいんだ!?
あいつが生徒の時の呼び癖が抜けなくてずるずると来てしまったのが仇になるなんて……
長嶺みたく怜くん? いやダメだ寒気がしてきた。
久瀬だから……くーちゃん? って私ももう久瀬じゃないか。
そもそもくーちゃんってなんだ。自分で考えておきながら呼ぶの恥ずかしいぞ。
まずい、こんな風になるなら引っ越しの手伝いを麻帆や奏たちに頼まなきゃ良かった……
やっぱり、怜二って呼ぶのが無難……だよな?
ああああでもこっ恥ずかしい!! いや覚悟決めろ私! ここで呼べなかったら一生呼べない気がする!
でも……こんなことで悩めるのも幸せってことか。
END