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「……ねえ」

「ん?」

「あなたって、童貞?」

「なっ!? い、いきなり何を言うかな、君は……」

「動揺してる」

「してねーよ! 余裕ありまくりだって!」

「童貞のクセに粋がっちゃって」

 

……なんだよ、この流れは。

 

自分だって不安そうな顔してるのに。

「二十歳過ぎて童貞なんて、恥ずかしくて人には言えないわよね」

「焦ってるんでしょ? だったら経験させてあげてもいいけど?」

 

この状況で、よく上から目線で話せるよな。

 

アリスらしいと言えばそうだが……

「あたしが……あなたを男にしてあげるわよ」

「その口ぶりだと、アリスが経験者っぽく聞こえるな」

「…………」

「あれ? まさか本当に……」

「うるさいわねっ。どうせ経験ないわよ!」

「……それって、処女ってことだよな?」

「どーてーよりマシ!」

 

なんちゅー理屈だろうか。
おまけに色気もクソもあったもんじゃないな、この初体験。

「アリス、愛してる」

「バカじゃないの?」

 

強引に雰囲気を作ろうかと思ったが失敗。
アグレッシブすぎるだろ、この処女……

「別に経験がなくたって……想像でどうにでもなるわよ」

「あなたがこんな行動をとるのも予想済みっ」

「俺との×××をイメージトレーニングしてたのかっ」

「不安なら、あたしがリードしてあげよっか?」

「処女がそういうこと言うかねえ……」

「しょ、処女だって……どーてーのこと、リードしたいって思うわよ」

「でも、この体勢でどうやってリードするんだ?」

「…………」

 

アリスはチラリと下に目を向ける。

「ひゃっ! デカっ!?」

 

そして、驚いた様子で俺の顔を見た。

「どうした?」

「……なんであなたの……そんなにおっきくなってるの?」

 

男性器を直視できないのか、顔を背けて横目で見たりしている。

「普通だよ、このぐらい」

「普通って……やっ、引っつけてこないでってばっ」

「ていうか、気付くの遅すぎ」

「やだやだやだ、どうしてそんな反り返ってるのっ?」

 

この様子じゃ、男のを見るのも初めてなんだろうな。

 

まったく。

 

困った子だ(最高の褒め言葉)。

「このぐらい、イメージトレーニングで想像してたんじゃないのか?」

「そんなに大きいの……想像してなかったわよ」

「それなら、今度からこれがスタンダード」

「……本当に大丈夫なの、それ? 血管とか……すごいけど……」

 

見てないようで、しっかり見てるのな。

「男っていうのは、赤ちゃんを作るときはみんなこうなるんだよ」

「赤ちゃんを……作るとき……そっか、そうだよね。
 赤ちゃん、作るんだもんね」

 

あっさり納得された。

「って、赤ちゃん!? 赤ちゃんって! 赤ちゃんってっっ!」

 

訂正。納得はしてもらえませんでした。

「あなた、頭おかしいんじゃないの!?」

「いや、例えばの話だって。
 アリスだって、いきなり赤ちゃんを作る気はないだろ?」

「そんなの当たり前でしょっ。
 まだ名前だって考えてないし、
 赤ちゃんのオモチャだって買わないと……」

 

名前やオモチャの問題なんだろうか。

「あの……まさかそんなのを挿れようとか考えてないですよね?」

「ダメ?」

「そんなデカいの入るわけないじゃん!
 あなた、脳みそがウニなんじゃないのっ!?」

「そんなにデカくないって」

「だって、太さとかあたしの手首ぐらいあるしっ。
 長さだって……もぉ、何センチあるのよ、それぇっ」

「ん、16cmぐらいだったかと」

 

暇な時、定規で測ってみた。

「お前はあたしを殺す気かぁっ」

 

両脚をバタバタさせて泣きそうになっている。

「大丈夫だって」

「絶対、大丈夫じゃないっ。
 あたし、知ってるんだからねっ」

「男って『痛いのは最初だけ』とか『だんだん気持ちよくなってくる』
 とか上手いこと言って、猿みたいに腰を振るだけなんでしょっ?」

「猿みたいに腰を振るのは否定できないかもしれない」

「否定しなさいよ、バカっ。
 やだからねっ。そんなの挿れさせないっ」

 

……さっきは、俺を男にしてくれるって言ってたのに。

 

ま、仕方ないか。
こういうのはじっくり慣らしていかないとな。

「分かった。やめておこう」

「え……しないの?」

「嫌なのに無理やりしたって仕方ないだろ?」

「…………」

「ちょっと、調子に乗りすぎたな。俺も……」

 

それでも空気を読めずに反り返っている逸物が恨めしい。

「あ、待って!」

「ん?」

「あたしも調子に乗りすぎたし……
 イヤってわけじゃないんだけど……」

「さっき指でしてもらったときも、お腹が苦しかったぐらいで……」

「男の人のが、そんなに大きいなんて思ってなかったし……」

「ああ、分かってる」

「だから……先っぽだけ……」

「え?」




「さ、先っぽだけじゃダメかな?
 全部は無理だけど、先っぽだけなら我慢できると思うし……」



 

 
 
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