とっぷ   こんせぷと   すとーりー   きゃらくたー   いべんとしーじー   すぺしゃる  
   
 
本テキストは、コミックメガストア6月号(4月17日発売)掲載の、
宅本うと・早瀬ゆう両氏のインタビューに紙幅の都合上掲載できなかったお話を、再構成したものです。
ぜひ、コミックメガストア誌のインタビューと合わせてご覧ください。




○『ラブラブル』はメイドもの……ではありません

――設定についてもう少し伺ってよろしいでしょうか。
フルーティアの制服はちょっとメイドっぽくもありますが、メイドものの要素を 取り入れる意識はおありでしたか?

早瀬ゆう氏
(以下、早瀬)
メイドものという意識はしていないですね。

宅本うと氏
(以下、宅本)
『ラブラブル』はメイドものでもファミレスものでもなくて、あくまで「ギャルゲー」なんです。
「〜もの」と謳ってしまうと、ユーザーさんの幅を狭めてしまいますので……。
今回のデザインは原画家さんにお任せして、
「あなたが一番可愛いと思う制服を描いて」ってお願いした結果が、ああなったという感じです。

――ちなみに、フルーティアの制服はどなたのデザインでしょう?

宅本
ひなたさんですね。あの方は服などをすごくヒラヒラさせる人なんですよ。
『晴れハレはーれむ』のときは「着色が大変なのであまりヒラヒラさせないで」とお願いしたんですが、
今回は「好きにしていいよ」と言いました。そうしたら大変なことになったんですけど(笑)。
好きにしていいと言った手前リテイクも出せませんので、そのまま行きました。

――フルーティアの制服は本当に細かいですからね……。
グラフィッカーさんのご苦労が忍ばれます。学園制服のデザインはどなたがご担当だったのでしょうか?

宅本
美浜学園がひなたさん、友枝女学院があめとさんですね。

――花穂のデザインと一緒に友枝の制服も、という感じでしょうか。

宅本
そうですね。

――各キャラクターの色指定を決められたのはどなたでしょうか?

宅本
SMEEでは、まず原画家さんサイドに、自分はこんな色をイメージしていますというのを出してもらいます。
それでいけると思ったらそのまま、いじりたいと思ったところは調整して、グラフィックチーフに塗ってもらって、
上がってきたものを自分が最終的に判断します。

――グラフィックチーフさんと宅本さんが主導されているということでしょうか。

宅本
色っていうのは広報にも影響する、大事なポイントですからね。
今回は全キャラを一緒に見たときのバランスというのはあまり考えていなくて、
そのキャラが一番可愛いと思う色にしました。今回はキャラをとにかくキャラを押したかったので、
バランスを優先して各キャラの魅力が減ってしまうようなことはありえないと。
結果的には、バランスも取れたんですけれども。

――フルーティアや学園の制服の色についてはいかがですか?

宅本
そちらも原画家さんに3、4パターン出してもらって、
一番良いなと思ったものをベースにグラフィックチーフが微調整をして、決定に至りました。

――それにしても、『ラブラブル』のお二人の組み合わせは神がかっていましたね。

宅本
色んな人にそう言われるんですけど、偶然です(笑)。
ただ先にひなたさんが決まっていたので、ひなたさんの絵に合う人をというのは念頭にありました。
お二人とも線が多いというところも共通していましたし。



○ファミレス最大の萌えポイントは休憩時間

――『ラブラブル』ではカフェというかレストランの裏側、働く側の描写がリアルだと評判ですが、
どなたかがご勤務された経験がおありなのでしょうか?

宅本
自分が学生の頃ずっと高級志向のファミレスで働いていたんです。
だから、ファミレスがどういう風に動いているかというのは良く知っていました。
働いている感を出したいというか、ファミレスってこんな楽しいこと、
萌えポイントがあるんだよっていうのを描きたかったんです。
例えば、ファミレスものでの一番のイチャイチャポイントは休憩時間なんですよ!

――『ラブラブル』は休憩時間でのイベントが多かったですね。
休憩時間がなぜ萌えポイントなのかについて、もっとお伺いしてよろしいでしょうか?

宅本
ファミレスでは「あなたとあなた、これから休んで」という感じで強制的に休憩を取らされるので、
誰が相手でも2人きりにされるんです。そこで強引に話しかけて仲良くなったりとか、
今度遊びに行こうよと誘ったりできるよな……と、元店員としては妄想が働くんですね。

――なるほど。

宅本
本当はもっとそういう描写を入れたかったんですけど、容量の都合もあって『ラブラブル』では匂わせる程度にしました。

――メディア向けの資料ではヒロインが主人公と付き合いだしてどう変化するかまで書かれていますが、
この情報を発売前に出されたのは何故でしょう? ネタバレと言われるリスクもあったかと思うのですが……。

宅本
ストーリーが中心のゲームではネタバレしちゃうとダメですが、『ラブラブル』はキャラゲーなので、
むしろそこから妄想が働くんですね。
「このヒロインが変化しますよ」だけだと「ふーん」で終わってしまうんですけれども、
「このヒロインはこう変わっていきます」というのを出すことによって、
「じゃあこういう展開があるのかな?」って想像する楽しみが出てくるんです。
出すことによってキャラ萌えというのは広がるんだと。

――確かに、どう変化するというのはイメージしやすかったですね。

宅本
キャラゲーの一番のポイントは、受け手の妄想がどれだけ働くか、どれだけ悶えさせられるかだと思っていますので。



○「妹にメール、送りたいじゃないですか」

――主人公は適度に不出来である必要があるとインタビューでおっしゃっていましたが、
やってみると「あれ? この子めちゃくちゃ出来る子じゃね?」と思いました。

宅本
不出来っていうのは、例えばこの主人公は夏休みの宿題をまともにやりませんし、
たぶん学園に遅刻したりさぼったりもする子なんですね。

――そういう意味での不出来さ、優等生じゃないってことですね。

早瀬
みんな昔はこうだったよね? って感じです。

宅本
主人公に関してもう1つ言うと、自分はSなので、ヒロインを弄りたいっていうのもあります。

早瀬
ドSですもんね(笑)。

宅本
弄りまくって、ヒロインの綺麗なところをぶっ壊したいんですよ。
いつも笑顔な子は怒らせたいし、いつも内気な子には怒鳴らせたい。
つぐみなんかは怒鳴らせたい子なんですけど。怒鳴らせることで、
この子には強い一面もあるんだというのを見せられますし、パートナーとして頼れるなという気持ちも出てきます。

早瀬
実は全ヒロイン中、つぐみは一番叫んでいるんですよ。

――……確かに!

宅本
主人公が受け身だと、ヒロインは初期設定のまま動きません。
主人公がちょっかいをかけるから意外な一面が出てきて、ヒロインを立体的に感じられるようになるんです。
キャラゲーはストーリーを展開させるのではなくキャラを展開させるものだと考えていますので、
主人公を動かすのはその為の1つの手法だと思います。

――ところで、主人公の部屋はワンルームですよね? 妹と2人でワンルームって、なにげにすごい設定だと思うのですが……。

早瀬
ワンルームですね。自分ではそんなにすごい設定にしたつもりはないんですけど。

宅本
(早瀬氏に)あなたのことだから、妹と同じ部屋に住むのは当然だろう、くらい固い意志があるのかと思ったけど?

早瀬
まあ、それは当然なんですけど(断言)。
花穂は主人公と別々の部屋にはなりたくないはずなので、ああなったということですね。

――隣で寝ている花穂にわざわざメールを送るというのが意外でした。そういう萌えもあるんだなと。

早瀬
夜にメールを送るようになっていて花穂も選択肢の中にあるというシステム上の都合もありますけど、妹にメール、送りたいじゃないですか!

宅本
「なんでわざわざメールを送ってくるの?」みたいな。

早瀬
反応を見たいんですよ。

――主人公が転校初日、男子学生に絡んでいって、
いつの間にか友達になって「人間関係ってこういうもの」って断言するのが印象的だったのですが、あれは早瀬さんの持論なんですか?

早瀬
持論でもありますし、自分が学生の頃はあんな感じだったので、それが元ネタになっていますね。
ライターをやる前にいろんなバイトをしていて、知らない人と一緒に仕事をすることが多かったので、
相手とすぐ仲良くするにはどうしたらいいかというのを考えていたんですね。
いろいろ研究したんですけど、結局“勢い”しかないという結論に至ったんです。

宅本
早瀬がたくさんのバイトをして得た経験っていうのは、ゲームの色々なところに生かされていると思いますね。

――『ラブラブル』にはたくさんギャグが入ってますが、パロディネタはあの少年Aくらいで、ほとんど無いですね。

宅本
パロディネタって、分かる人は分かるけど分からない人は分からないじゃないですか。
それを売りにまで昇華してるなら良いのですが、そうでないとプレイヤーの不満に繋がってしまうんですよね。
元ネタがわからないと置いて行かれた感が出てしまうので……。
頭をからっぽにして楽しむタイトルなのに予備知識が必要になるのはちょっとコンセプトからずれると考えています。

早瀬
そもそも自分がタイムリーなパロディがあまり分からないっていうのもあります。
アニメやゲームはたくさん見るんですけど、ずっと前の作品を見たりすることが多くて、
そのとき流行っているネタは分からないんですね。
だから逆に、パロディネタを入れて下さいと言われたとしても、あまり出来る自信が無いんです(笑)。



○サブキャラはノリと勢いで決めました

――男性キャラのデザインにインパクトがありますが、デザインにあたってどのようなリクエストをされたのでしょうか?

宅本
何も言ってないですよ。らっこさんからデザインが上がってきた時に少し考えましたけど、
これはこれでいけるんじゃないかなと。インパクトはすごくあるし、ある意味イメージ通りではあるなと考えました。
サブキャラに関しては、ノリと勢いで割と決めてしまっていますね(笑)。

――ところで『ラブラブル』というゲームに関して、どの辺が宅本さんのカラーで、どこからが早瀬さんのカラーというのはありますか?

早瀬
……あります?

宅本
『らぶでれーしょん!』のときには早瀬くんはライティングに専念してもらったんですが、
『ラブラブル』に関しては、2人でディレクションしたというのが正しいですね。
主に早瀬くんがシナリオやスクリプトを、自分がビジュアル面全般をまとめるという二人三脚でした。

――先ほどの2次元の女の子が可愛くなるかどうかの基準についてのお話が興味深かったのですが
(詳しくはコミメガ誌記事をご覧ください)、もう少し伺ってもよろしいでしょうか。

宅本
「チ●コが勃たないエロゲヒロインは意味がない」て話ですよね(笑)
早瀬くんの話を聞いていてなるほどと思ったのが、彼はいわゆるギャグ顔が好きではないんですよ。
ギャグ顔が出た瞬間にそのヒロインが遠くに行ってしまった気がするというんです。

早瀬
ギャグ顔が出た瞬間だけ、そのヒロインの表情が記号になってしまうと思うんですね。
個人的には、それだと生きているって感じがしないんですよ。

宅本
コメディではギャグ顔を使うのって常套手段だと思うんですが、
本気で二次元世界の女の子を生きている存在として愛そうと思ったときには、
それが妨げになると言う考えもあるんだと思いましたね。
前作の『らぶでれーしょん!』ではギャグ顔は0でしたが、
ちょっと苦しかったので『ラブラブル』では少しだけ通させて貰いました。
SD絵も同じで、『らぶでれーしょん!』『ラブラブル』ともにゲーム中いっさいSD絵は出していません。
チラシとかで出すぶんには構わないと思いますけど。

――SD絵は、誇張表現の一種ですからね。

宅本
ギャグ顔やSD絵は可愛らしさや楽しさ、勢いの表現としては優秀だと思います。
ただ、使いすぎるとキャラクターを性的対象にしにくくなると思うんです。
極端な話ですが、SD絵やギャグ顔でヌケる人が大勢いるとは思えませんので……。

――そこは先ほどのお話(詳しくは記事をご覧ください)と通じるわけですね。ちなみにスタッフの皆さまの間では、どのキャラが人気ですか?

宅本
スタッフ全体では、奈々子が人気なのかなあと思いますね。

――宅本さんは?

宅本
個人的な好みだけであえて言うなら千夏ですね。からかってこれほど面白いヒロインは、そうそういないなと。

早瀬
もちろん全員好きなんですけど、彼女にするんだったら奈々子さんですね。
シナリオを書いているときも、彼女に惚れながら書いていました。
妹好きなんで花穂も好きなんですけど、花穂は“妹”なので。恋人にするという選択肢はないですね。

――長時間にわたるお話、まことにありがとうございました!


 
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